他の制度との比較

「成年後見制度」ではカバーできないの?

成年後見制度とは・・・
認知症や精神障害などによって、物事を判断する能力が十分でない方(以下「ご本人」といいます)を保護する制度です。成年後見人は、ご本人に代わって財産管理や法律行為、身上監護(*)を行います。
成年後見制度には、
・ご本人がお元気なうちに後見人になってほしい人と契約をしておく任意後見制度
・ご本人の判断能力が十分でなくなってから、親族の申し立てによって開始する法定後見制度
の2種類がありますが、どちらも成年後見人の財産管理の役目は「ご本人の財産を守る」ことです。
たとえご本人がお元気なうちに望んでいた証拠があっても、成年後見人が自由にご本人のご家族のために贈与をしたり相続対策を行うことは、ご本人のためではなくご家族のためなのでできません。ご本人の財産を組み替える(例:不動産⇒現金、現金⇒不動産)際には、都度、家庭裁判所への報告・許可が必要です。また、「ご本人の財産を守る」趣旨から、ご本人の財産が減るおそれのある財産の積極的活用もできません。
*身上監護…介護施設、医療機関との契約や各費用の支払いなどのことをいいます。成年後見人が直接介護を行うことではありません。

成年後見制度 よくある誤解

成年後見申立てのきっかけになったことが終わっても、成年後見は終わりません。

預金口座の解約、施設との契約、不動産の売却など成年後見人が必要な出来事が済んでも、成年後見は終わりません。ご本人が亡くなるまで継続します。「不動産売却のためだけの一時的な成年後見」という制度はありません。

ご家族が成年後見人になれるとは限りません。

2019年の成年後見申立事件概況では、親族が選任された割合は21.8%です。また、親族が後見人に選任されても、弁護士や司法書士など専門職が、「後見監督人」や「もう一人の成年後見人」として家庭裁判所の職権で就任するケースが多くあります。そして、専門職が就任している期間は報酬が発生します。

成年後見人は、ご家族の願いをすべて聞いてくれるわけではありません。

専門職後見人は、ご本人の関係者(ご家族、医療介護関係者など)から意見を聞きつつ、独自の判断でご本人のために最善と考える後見事務を行います。この判断がご家族の意向と一致しない場合もあります。「ご本人が元気な時はこう望んでいた」ということは成年後見人を拘束せず、成年後見人は独自の判断でご本人の財産を守ります。

お父さんが亡くなって、お母さんは認知症。
遺産を全部お母さんにあげるつもりでも、成年後見申立ては必要です。

ご本人(お母さん)に全面的に有利な遺産分割でも、遺産分割には協議者の意思能力が必要であるため、お母さんの成年後見人が就任するまで遺産の預金口座解約や不動産名義書き換えはできません。

「遺言」では
カバーできないの?

遺言と家族信託の違い

遺言では、自分の次に財産を承継させる人しか指定できません。

遺 言

<父他界後の流れ>

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家族信託では、自分の次の承継人、さらにその次の承継人と何代にもわたって受取人を指定することが可能です。

家族信託

<父他界後の流れ>

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遺言 家族信託
効力発生

ご本人が亡くなってから
(認知症の期間対応せず)

信託契約後すぐ
(信託契約後であれば、
ご本人の健康状態を問わない)

次の次以降の
承継人

決められない
(妻の甥など、会ったことのない親族に
自分の財産が承継されることがある)

決められる
(自分の後は妻、妻の死後は自分の実家側の親族、など線で指定することができる)

内容の変更

単独でできる
(承継人の立場は不安定)

契約者間の合意が必要
(承継人の立場は安定)

遺言の方法

遺言作成をお考えになった場合、以下の方法があります。
特に、2020年7月から始まった自筆証書遺言の法務局保管制度に注目が集まっていますが、当センターとしては
・法務局で保管され、家庭裁判所の検認手続きが省略されることで利便性が上がったものの、「自筆証書」遺言であることに変わりはなく、遺産の承継がスムーズにできるかわからない(特に金融機関)。
・法務局では、自筆証書遺言の預かり時に遺言の形式確認は行うが、内容について一切アドバイスはしない。
・専門家のアドバイスなく作られた自筆証書遺言が実務的にそのまま利用できた実例がほとんどない。
これらのことから、法務局保管制度が始まった後も公正証書遺言をお勧めしています。

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遺言書

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